退職あれこれ

45歳のライフシフト

リンダ・グラットンという方の著書で、とても有名な「ライフ・シフト」という本があります。これからは、教育→仕事→引退という一般的な人生の流れが変化し、仕事と引退の境目が80歳くらいになるだろうと言っています。そして長くなった「仕事」の部分では、終身雇用的な考えを捨て柔軟にもっと自分らしく生きることを考えるべきだ。そんな風に、人生設計の違うあり方を提案しています。

イドは45歳で大きな決断をしました。20年以上勤めた公務員を辞め、フリーランスとして第2の人生を歩む道を選択したのです。3人の子供の教育費や住宅ローン、出費はまだまだ増え続ける一方です。公務員でいれば安定した収入が得られ、贅沢はできないまでも不自由ない生活を送ることはできたでしょう。それでもイドは独立の道を選ぶことを決めました。

現在の60歳定年であればあと5年もすればゴールが見えるところまで来ていました。しかし、定年が65歳に引き上げられることは確実であり、もっと言えば20年後がどうなっているかはわかりません。年金で悠々自適な生活などという老後が望めないことはわかっていますが、日本の財政や社会保障の現状を見れば、これからの世代にとっては死ぬまで働くということは十分に想像できる未来だと思います。

そう考えたとき、公務員であれ会社員であれ将来は完全に予測不能だということに気づきました。「ライフ・シフト」にもあるとおり、80歳からを老後と考えれば、あと35年は何らかの仕事に就いて生活費を得る必要があります。この35年という時間をどう使うのか、その使い方次第で人生の満足度は大きく変わる気がしました。

私の場合、どうせ予測不能な未来なら、思い切ってやりたいことに挑戦してみようと思い立ち決断をしました。もちろん、あれこれと理屈付けをしてみたり、老後までのキャッシュフロー表を作成してみたり、ありとあらゆる側面から自分の決断の裏付けをしようとしましたが、結局はどこかに仮定の要素が含まれていて、予測不能の域を脱することはできませんでした。

それでも、決断できた理由はただひとつ―

それは、数年後まだ公務員でいる自分が、公務員を辞めて好きな仕事をしている自分に出会ったとしたら、あのときなぜ決断しなかったのかと後悔しないではいられないだろうと思ったからです。そして、その自分の将来の気持ちに疑いを持たなかったからです。

公務員の仕事が嫌で仕方なかったわけではありませんが、年齢が上がるにつれ、必然的にマネジメント業務の割合が増え、気がつけば労働時間の大部分は上司への説明資料の作成や部下の指導に費やされていました。

そうするうちに少しずつ社会に直結した仕事をしているという実感が薄れ、もっと生産的な仕事がしたいという欲求は日に日に強くなっていきます。

そして1年後、45歳になったイドはライフシフトのスタート地点に立つことになります。

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