以前、退職について悩んでいる頃、ある先輩からこんなことを言われました。
「公務員を辞めることは決して現実逃避ではない。なぜなら、これから飛び込む世界、直面することこそが現実なのであって、むしろ現実に突入するのだと」
現実は厳しい
20年以上公務員を続けてきた人間にとっては、それは想像し得ない世界かもしれません。
朝、職場に行くと机の上に仕事がある。
公務員や会社員にとって当たり前のことが、当たり前ではなくなる。
独立にあたりある程度の収入予測をしました。
少なくとも最初の半年間は無収入になると想定をしているので、実際にそうなってもそれは想定内の出来事なのですが、日に日に減っていく預金残高を目の当たりにして平常心でいられるかどうかはわかりません。
最初の転職は現実逃避
イドは公務員になる前、少しだけ民間企業に勤めていました。辞めたきっかけは今でいうパワハラです。新卒で採用され配属先で聞こえてきたのは、「あいつ3カ月もつかな」という言葉でした。自社でも出向先でも部下をみんな辞めさせてしまうという上司の元で10カ月間働きました。
当時は「パワハラ」という言葉はなく、ひたすら耐える毎日でしたが、寮で良くしてくれた先輩が海外に転勤になったのを機に辞めることを決意しました。そのときは辞めてどうするかを考える余裕などなく、とりあえず公務員試験でも受けてみるかと漠然とした想いで実家に戻ったことを覚えています。
その後、公務員試験に合格し、採用されるまでの約1年間をフリーターとして過ごすことになります。
受験までの半年間は大学受験のときよりも勉強をしました。周りを見れば一緒に卒業した友人たちは普通に働いています。今思えば、平日の昼間に家にいることがどこか後ろめたく、とにかく勉強することでそれを打ち消そうとしていたのかもしれません。
20年前の現実逃避。その決断は今思い返しても間違いではなかったと思っています。現実逃避というとネガティブな印象を受けますが、結果、その後の20年間は公務員としてほどよく快適に過ごせたのではないかと思っています。
45歳、再びの転機
そして45歳になった今、2度目の転機を迎えることに。
果たしてこれは、現実逃避か、現実突入か。
前回とは違い、今度の選択は自らの意思決定によるものです。
クイズのように、どちらを選んでも正解、不正解の音は鳴りません。
正解だと信じて選んだ道を、自分の手で正解へと導いていく。
それしかないのだと思っています。